通称「八坂の塔」は、臨済宗建仁寺派の法観寺五重塔で、京都でも屈指の歴史の古さを誇ります。残念ながら応仁の乱で法観寺の他の伽藍は焼失し、五重塔だけが残ったのだそうです。

 

八坂の塔をぐるっと右に巻いて、二年坂の降り口を過ぎ、産寧坂(三年坂)の賑わいを通り抜け、突き当りの清水坂を左に折れて松原通を上がればいよいよ目的地「清水寺」です。

さすがに産寧坂から清水坂にかけては修学旅行の中高生の密度が高く、どの土産物店の店先にも人だかりができています。

産寧坂と清水坂のT字路の角にある「七味屋」をご存じでしょうか。京都を訪れるたびに、この店の香り七味を買って帰ったことを思い出して店を覗いてみると、店員さんが白い紙コップを差し出してきます。中を見ると、一味唐辛子に水を加えただけの「一味水」とでもいうべきものが入っています。

勧められるままにその一味水を飲んでみると、辛みの向こう側に微かに柚子の香りがします。なるほど柚子風味の一味唐辛子かと感心しながらコップを返すと、入れ替わりに別のコップを渡されます。今度は複雑な七味唐辛子の風味の中に山椒の香りが冴えている「七味水」です。

唐辛子の品定めに水に溶いて味見するという発想はなく、とても新鮮ですね。

迷わず2杯目にいただいた七味を購入して、次は錦古堂でこの夏のアイテムとなる扇子選び。

なかなか清水寺にたどり着けません。

デザインや色調の異なる沢山の扇子の中から、互いに惹かれ合うような、「これだ!」という特別な出会いを期待してゆっくりと店内を回ります。

さんざん迷った末に選んだ今年の扇子は、涼し気な藍染の紫陽花模様です。

店を出たところでいきなり目に留まったのは「狐面の女学生」です。修学旅行の班行動で清水寺からの帰り道。制服姿で颯爽と坂道を降りてくる集団の中に、一人だけ狐のお面を斜めに頭にかぶった女生徒が混じっています。調子に乗ってお茶らけるでもなく、恥ずかしげにキョロキョロするでもなく、涼しげな笑顔で友人たちと談笑しながら背筋を伸ばして風を切って坂道を降りてくる姿は、なかなか格好良いものです。通りすがりの見知らぬ同士ですが、その表情や仕草ににじみ出る衒(てら)いのない生き方に憧れます。

さて、清水の舞台を撮影するなら、何といっても奥の院から。

舞台からの見晴らしを堪能した後で、順路に沿って奥の院へ。手前で階段を降りると音羽の滝へのショートカットとなるのですが、ここは是非とも奥の院へ。遥か京都の街並みを借景に清水の舞台を斜め正面から画角に収めることができます。

時間があれば森の中を散策しながら遠回りして音羽の滝へと降りていく道を選択しますが、時間のない時は少し戻って音羽の滝へのショーカットとなる階段を降りることをお勧めします。

ちなみに、音羽の滝は清水寺創建時(1200年前)より枯れることなく湧き続ける霊泉です。それが三つの樋に分かれて(三条の滝)異なるご利益をもたらします。清水寺の御本尊は千手観音菩薩ですが、ここ音羽の滝の御本尊は不動明王です。

向かって左(清水の舞台側で、滝の裏からは一番右となります)が「学業成就」、真ん中が「恋愛成就」、そして右(滝の裏からは一番左になります)が「延命長寿」となっています。

今日は、修学旅行生が列をなす音羽の滝をパスして舌切茶屋を横目に東山散策に戻ります。

八坂神社から円山公園を抜けて、知恩院・青蓮院門跡と歩き、時間があれば必ず歩いていた南禅寺から銀閣までの「哲学の道」を諦めて平安神宮に向かいます。

文責:石井