旧暦8月15日の「中秋の名月」からおよそひと月、旧暦9月13日の月を「十三夜」と呼んで同じようにお月見をする習慣のあったことは以前の【暦の話】でも紹介しました。
「十五夜」と「十三夜」、いずれか片方の月を眺めることは「片月見(かたつきみ)・片見月(かたみづき)」と言って、縁起の悪いこととされていました。しかも、この「十三夜」は「十五夜」を眺めた同じその場所から眺めるというルールさえあって、日常的に観月の習慣の希薄になっている現代人にとっては、少しばかり敷居の高い話です。

満月の二日前、満ちる一歩手前のわずかに欠けた月。
以前も紹介しましたが、日本人は、隙もなく完璧なものよりは、むしろ完成の一歩手前の「未完成」に美意識をくすぐられる民族性をもっているようです。

「花は盛りに、月はくまなきをのみ見るものかは。」(徒然草 兼好)

桜の花は満開のときだけが美しいのでは決してなく、例えばようやく咲き始めた桜の枝に瞳を輝かせたり、吹雪のように舞い散る花びらの美しさに心を奪われたりします。だとすれば月も陰りのない満月だけが見るべきものということでもなさそうです。

今年の「十三夜」は10月8日(土)となります。
二週間予報では、どもやら天候不良となりそうで心配ですが、「雲のいずこに月宿るらん」と見えない月に思いをはせるのもまた風情というものかもしれません。

文責:石井