「土用」というのは「季節の変わり目」という意味を持つ期間のことで、四立(立春・立夏・立秋・立冬)の直前の18日間を指しています。

一方、「丑」というのは、お気づきの方も多いかと思いますが、十二支(子・丑・寅・卯・辰・巳・馬・未・申・酉・戌・亥)の2番目にくる「うし」の日を指し、カレンダーにはこの十二支が順に当てはめられていていきます。

二つの言葉が組み合わさった「土用の丑の日」ですが、ここまでの解説でお分かりのとおり、少なくとも年に4回、季節毎に訪れる日なのです。ところが、「土用の丑の日」が特に「夏」に限って使われるのは、夏バテや食欲減退を防ぐためにビタミンA・B群の豊富な「鰻(うなぎ)」を食す習慣と結びついているからだと考えられます。ちなみに、18日間に対して十二支を順に当てはめていくと、年によって、また季節によって丑の日が2日存在する場合があります。つまり「土用の丑の日」が同じ季節に2度訪れるわけです。この場合「一の丑」「二の丑」と呼び分けて区別します。

さて、2021年、今年の「(夏の)土用の入り」は7月19日(月)で、この日が「辰(たつ)」にあたるので、「(夏の)土用の丑の日」は7月28日(水)となります。

ここからは「鰻(うなぎ)」の話題です。

ビタミンA・B群が豊富で栄養価の高い鰻を食して、夏バテや食欲減退を防止する習慣というのは、「万葉集」にも詠まれていることから、少なくとも奈良時代にまで遡ることができます。

問題となるのは、この「鰻」と「土用の丑の日」を結び付けたものは何かという点ですね。諸説ありますが、最も有名なエピソードは平賀源内説でしょうか。

売り上げが伸びず悩んでいた知り合いの鰻屋に相談を持ち掛けられた平賀源内が、もともと「土用の丑の日」に「う」の付く食材、例えば「梅干し」「うどん」「ウリ」「牛」「馬」等を食して夏バテを防止するという習慣があったことを利用して、鰻屋の店先に「本日 丑の日」というポスターを貼るように勧めたところ、「う」の付く食材である「鰻」が飛ぶように売れて繁盛した、というエピソードです。

平賀源内は江戸時代中期に生まれ、文武両道、多彩な分野で活躍したいわゆる天才肌の人物です。

現代の日本では、日々の食生活において栄養不足を心配する必要もないため、「鰻」に特別な効果は期待できず、ビタミンA・B群の不足に悩んでいる人を除けば、「土用の丑の日」に「鰻」を食べなければならない科学的な根拠はないようです。

だとすれば、年越しそばを食べて新年を迎え、恵方巻を食べて立春を迎えるというような、むしろ年中行事のような意味合いが強いのではないかとも思うのです。