今回は「主語+述語+数字で語れる人になろう」ということを書いてみようと思います。

企業・団体が「人、物、金」という単純な存在の大きさ・数で勝敗が決していた時代から、「人財、情報、組織」という付加価値で企業の優勝劣敗が決するようになってきたことは、皆さんもご存じのとおりです。堺屋太一氏は、「知価革命」という書物の中で、「付加価値」を「知価」という言葉を使って、少種大量生産の工場制工業化社会から多品種少量生産、多様化・情報社会への移行を予測しています。25年も前に出された本ですが、現実にそのようになってきていますから、氏の予見は当たっているといえます。

ところで、「付加価値」が勝敗を決めるといわれても「では、どうしたら付加価値を付けることができるのか」というと答えはそう簡単ではありませんね。

「人」という生物体が、「人財」という社会・企業に貢献できる価値を具現化した存在になるためには、「問題分析能力」と「問題解決能力」を身に付ける必要があります。

では、どうしたらこれを身に付けることができるのでしょうか。

その前に、ある会社の会議の様子を再現してみましょう。

部 長:「今度新規オープンした○○店の客の集まりはどう?」

A課長:「けっこういるみたいです」

部 長:「具体的にどのくらいいるの?」

A課長:「よくはわかりません」

部 長:「夏より来店数が減ったようだが、要因は?」

B店長:「よくわかりませんが、他店も減っているそうです」

部 長:「どこの店がどのくらい減ったの?」

B店長:「パートさんのうわさなのでよくわかりません」

部 長:「外部の問い合わせはどうですか?」

C店員:「だいぶよくなってきました」

部 長:「どの年齢層がいいのですか?」

C店員:「担当者でないのでわかりません」

部 長:「無料券、割引券の戻り率はどのくらいなの?」

A課長:「あまり戻ってきません」

ミーティングではこのような会話がごく普通に交わされていて、しかも何の違和感も感じないことが多いような気がします。
「けっこう」ってどのくらいですか。「あまり」っていうのは、どのくらいでしょうか。
「減っていると思う」というのは、第三者的な表現ですが、それで自分の店舗が心配にならないのでしょうか。
「みたいです」「そうです」「ききました」「らしいです」というのは、「主語、述語があいまいです。

では、どんなやり取りがよいのでしょうか。

「競合店の○○の来店状況は?」

「受付のEさんに19時―20時を、私が21時―22時に入店してカウントしてきました。その結果、19時―20時で椅子席が6割、21時―22時で8割がうまっていました。」

・・・ここまでくると状況把握はきちんとできています・・・

「じゃぁ、うちで減っている年齢層と時間帯は?」

「20代で、昨年より1割減、時間帯は21時台で2割減です」

「他店は?」

「20代はそんなに多くはありませんでした」

「ということは、どうなる?」

「はい、内部での評判等でそういえば気になることがあります」

「うちで増えている年齢層はあるの」

「はい、あります。」

「どこなの」

「40代です」

「他店は?」

「はい、やはり増えています」

「じゃぁ、他店が原因というより、内に因ありだね」

・・・こうなると課題のピックアップはできたも同然ですね・・・
(ここから先は課題への解決能力になります)

「人財」とは、「課題に対して意見・提案ができ、これを実行できる人」をいいます。しかし、この意見・提案を適確にするためには、「課題のピックアップ」ができなくてはなりません。
課題のピックアップをするためには、「客観的事実の把握」をする必要があります。
「事実を把握できていれば、その中から何が問題点なのかという「判断」を下せばよいからです。
まず、課題のピックアップができるようになりましょう。

そのためには、「主語と述語を明確にし、数字で語る」習慣を身に付けることから始めてください。ミーティングでは意識して話してみてください。 ミーティングでは、結論を先に。それも「主語と述語と数字で」答えること。
数字で答えられるためには、いつも数字を意識していないとダメです。日々、数字を意識しながら、業務をする習慣を身に付けてください。
プライベートにおいては、暖かい言葉で語りかけ、会議においては硬い数字で報告する。
求められる「人財」とは、このような人なのです。

「暖かいファジーな言葉」と「硬い明確な数字」。この異なる性格の「言葉」を自由に操る。ここでも「Andの思想」は生きているとは思いませんか。
もうすぐ、われわれ教師にとって一番わかりやすい数字がでます。
「合格実績」という数字が・・・

(2010.11.30~2010.12.6)