【紫陽花】
紫陽花の「Hydrangea」という学名は「水の器」という何とも美しい意味なのだそうです。花の色が土壌のpH濃度等によって様々に変化するので和名「七変化」とも呼ばれます。よく見かける球状のものは改良品種の西洋アジサイで、花のすべてが額の変化した装飾花となっています。シーボルトによって世界に紹介された「アジサイ」の原種は日本のガクアジサイ(房の辺縁だけに装飾花がついてリング状に見えるもの)で、その色は「青」だったと言われています。
東京周辺の紫陽花の名所は、日野の高幡不動、文京区の白山神社、東京サマーランド「花の里」、鎌倉の明月院・東慶寺・長谷寺などなど…。
明るい空から大粒の雨の雫が時折パラパラと落ちてくるような、そんな天気の日が昔から好きでした。雫の一粒一粒が光を宿して、まるで水晶のかけらのようにきらめきます。急ぎ足で駅前のロータリーを横切っていく人の波に雨の雫が降りかかると、まるで紫陽花のように色とりどりの傘の華がパッと一斉に咲きます。それに雨の中でこそ、ぼくの好きな紫陽花の花も生き生きと美しいのだ、などと考えれば梅雨もなかなか捨てたものではありません。
まして、一晩続いた雨が名残なくあがった日の朝の風景は、例える言葉も浮かばないくらい美しかったりします。水溜りに映った青い空を悠々と流れていく雲。風が吹けばさざ波がたって、目の裏の痛くなるような光たちの乱反射。塵ひとつない透明な芳(かぐわ)しき大気。まだしっとりと露を含んだ紫陽花の花は一服の清涼剤のようでもあります。そんな風景に身をさらせば、胸のうちに生きる「元気」のようなものが静かに湧き出してもきます。
6月9日に例年より一日遅く梅雨入りした関東甲信越地方。さてさて梅雨明けはいつのことでしょう?
文責:石井