仕事の合間に受付けの野崎さんと話していて、思わず笑ってしまった話を紹介します。
野崎さんが町で拾った、ちょっと可笑(おか)しくて、けれどもほんの少し素敵な話です。想像力を働かせて、その情景を思い描いてみてください。
学校の帰り道でしょうか。小学4年生くらいの男の子が歩いています。その後ろを追うように小学6年生くらいの女の子がついていきます。
一体どんな話の続きなのか、年上の女の子が男の子をからかうように「キモ~イ!」とちょっかいを出します。すると年下の男の子が、少し怒ったように「キモイってなんだよ」と言い返します。
「キモチワルイを省略した言葉よ」と女の子。
「だったら初めからキモチワルイって言えばいいだろ。そんないい加減な言葉遣いをするから日本語がどんどんだめになっちゃうんじゃないか」と男の子。
どうですか。小学4年生の男の子と小学6年生の女の子というキャスティングが最高ですね。その年頃の正義感と精神年齢の高さで女の子が男の子を言い負かすのでもなければ、年上が年下をたしなめるのでもなく、年下の男の子が一人前の語り口で、それも「キモイ」と言われたことへの直接の反発ではなく、むしろ「キモチワルイ」と言われることについては納得して受け入れる覚悟を示しつつ、「日本語の乱れ」などという正論を吐いて話を自分の土俵にのせてしまうところが絶妙です。
ついでですが、最後に、ぼくがこれまでに町で偶然耳にした言葉の中でも、とっておきの一言を紹介することにしましょう。この言葉の奥深い可笑しさと恐さは、にわかに理解できないかもしれませんが、じっくりと味わってみてください。
「コンタクト、似合わないからやめた方がいいよ」