二十世紀も残すところ一週間。

ひとつの季節の終わりが、新しい季節の始まりと正確に重なり合うということを、ぼくらは既に知っています。

「二十一世紀の始まり」、そこに何か(過去の清算、もしくは新しい飛躍の第一歩、あるいは…)を期待する人は驚くほど多いのでしょう。けれどもまた、自分から動き出さなければ景色は変わらないということも、ぼくらは痛いほどわかっているのです。

均等に分割された時間、もしくは繰り返される日常というものに耐え切れない人々は、例えば誕生日であったり、元旦を迎える瞬間であったり、卒業や入学……とあらゆる機会をつかまえては、生まれ変わる自分を夢見て、人生に「区切り」を求めます。今回は、その中でも飛び切りの節目といっていいのでしょうが、やはりその瞬間をただ待ちつぶすだけでは何も変わらず、「時の流れ」以上の変化は期待できないでしょう。

だからこそ、残されたこのわずかな日々を堵して、ぼくは思い出さなければならないのです。

この季節を共に歩いたたくさんの大切な人々の懐かしい名前を、一人残らず。ぼくが「ぼく」として、今日この場所までたどりつくことのできた幸福を支えてくれた数え切れない人々の、せめて横顔だけでも。

それがぼくの、二十世紀と呼ばれた時代への訣別です。

そして、新しい気持ちでもう一度初めから、大切な人々との出会いを、もしくは再会をひとつひとつ始めなければならないのです。

二十世紀の闇が次第に青味を帯び、やがてそこへ二十一世紀の光りが溶け出し、静かに世界を満たすまでのわずかな時間に、自分自身を取り戻し、もう一度家族の一人一人と出会うところから始めるのです。かつてこの世に生をうけた瞬間のように、純粋な感動に胸を震わせながら……。

そしてこのステキな仲間たちとの再会や訪れる新しい出会いのひとつひとつを、心から大切に受けとめようと思います。

「初めまして。どうぞよろしく」
「よろしければ、ほんのひとときでも肩を並べて、同じ季節を歩いてみませんか。」

新しい季節は、もう、すぐそこまで来ています。

2000年12月25日

 

※随分と古い記事が見つかったので、思わずアップしてしまいました。

文責:石井