♪ 夏も近づく八十八夜 野にも山にも若葉が茂る

♪ あれに見えるは茶摘じゃないか

♪ 茜襷(あかねだすき)に菅(すげ)の笠

 

唱歌「茶摘(ちゃつみ)」に歌われた「八十八夜」。

「たすき」というと浮かんでくるのは駅伝のイメージかもしれませんが、ここで歌われている「たすき」は、作業をしやすいように袖(そで)や袂(たもと)をたくし上げる紐(ひも)のことで、赤い色をしていることから茜襷と呼ばれています。また、歌に登場する菅笠は植物のスゲを編んだ晴雨兼用の被り物ですが、ここでは日笠(ひがさ)の役目を果たしていると考えられます。ただし、テレビ等で茶摘みに関するニュースを見る限り、手ぬぐいで姉さんかぶりをする茶摘み娘の方がどうやら絵になるようです。

「八十八夜」は立春(2月4日)から数えて八十八日目ですから5月2日にあたります。ただし、昨年のように立春の日がずれると、当然のことながら八十八夜もずれてしまいます。24節気でみると5月5日が立夏ですので、八十八夜は立夏の直前にあたる雑節のひとつとなります。

「八十八夜の別れ霜」という言葉があります。「霜害」といって、作物に被害をもたらす霜ですが、八十八夜の頃を境に霜の心配もなくなるというわけです。逆に言えば、このころまでは霜の被害への注意が必要だという警告にもなります。

さて、立夏も過ぎ、ぼくが一年中で一番好きな季節「初夏」が始まります。草木の、それぞれに個性のある緑のグラデーション。若葉を透きこぼれる優しい木漏れ日。光と影のコントラスト。新緑の梢を渡ってくる風さえもうっすらと緑色に色づいて見えます。

四季折々、気候や自然のたたずまいに豊かな変化のある日本で暮らすのですから、多忙を言い訳にせず、たまには身近な自然の風景に身をさらしてみてはいかがでしょうか。

文責:石井