ぼくの知る限りにおいて、自然の最も美しい季節が訪れる

自身の誕生月ということを差し引いても、やはり5月は特筆すべき月だ
薫風などという言葉にこめられた、人々のささやかな喝采も素直にうなずける
生きること、もしくは生命そのものに対するそのさらりとした肯定は、なんといっても小気味良い

透き通った新緑の若葉たちは、まるで競い合うかのように、初夏の陽光を細胞のひとつひとつにたっぷりと吸収していく

そして、その光で満たされた葉の一枚一枚は、やがて自らの内に陽光を灯し
まるで自身が発光しているような淡い緑の微光を放ち始め
ついには葉裏を返して吹き渡る風さえもすっかり緑に染め上げてしまう。





