様々な植物を花期の順に並べて季節と重ね合わせたものを「花暦」といいます。
季節の移ろいを折々に咲く花の姿で知ることは、無意識にせよ私たちが日常的にしていることでしょう。
桜に先駆けて咲く梅や辛夷(こぶし)やハクモクレンの花に春の訪れを感じ、南から北へまるでリレーのように日本中が酔いしれる桜の季節が過ぎれば、菜の花や紫ダイコンの花を追いかけるように藤の花が咲き、やがてツツジや薔薇の花が初夏を告げ……、といった具合です。
さて、夏から秋へ……。この季節に見つけた花たちのいくつかを紹介しておくことにします。
黄昏に、光が薄れるのを待ちわびたように咲く「オシロイバナ」
闇の中へと降下していく落下傘部隊
花言葉は「あなたを想う」
ピンクのサルスベリ
和名で「百日紅」と書くのに白い花を咲かせる樹種もあります
この花を見るたびに
かつて夏ごとにキャンプした仲間たちとの時間を思い出します
あの秋川沿いの街道を飾っていたのはサルスベリの並木。
花言葉は「雄弁」
堂々と白い大きな花びらに似合わず
恥じらうように花芯を赤く染める芙蓉(ふよう)
花言葉は「繊細な美」
夏の間
遠くかすんだように見えた
秩父山地の山並みが
ゆっくりと
日ごとに
その輪郭を取り戻していきます。
午後の遅い時間には
まるで搾り立ての果実のように
日差しが橙色に熟す瞬間があって
そんなとき見慣れたはずの街並みがとても優しく見えます。
陽が落ちると虫の声
樹上からも草むらからも
しびれるように空気を震わせて
耳だけでなく心をふるわせます。
夜道で
ふと立ち止まり見上げると
天頂にペガススの大四辺形
夏の星座を追いかけるように
冬の星座に追い立てられるように
ゆっくりゆっくり西へと移っていきます。
やがて
ぼくの好きな金木犀の花が
しっとりと湿ったあるともない風に
その甘い花の香りを乗せて運ぶ日が訪れれば、すっかり秋も深まっていきます。
文責:石井