ある日電車の中での親子の会話が耳に入ってきました。

「お母さん!今日テレビどこで買うの?」

「そうね、秋葉原の○○カメラにしようかなぁ」

「○○カメラってテレビも売っているの?」

「何でもあるわよ。テレビなんか何十台も並んでるのよ」

「そうなんだぁ。じゃぁ、何で○○カメラっていうの?」

「う~んっ、・・・・!?」

皆さんは駅の近くや郊外にある家電量販店といえば「○○カメラ」「カメラの○○」という店名をいくつかすぐ思い浮かべることができるでしょう。

では、なぜ総合家電販売店に今では商品のごく一部になってしまったカメラの名前がついているのでしょうか?本当のところはその会社に聞いてみないと分かりませんが、私はこのように推察します。

私たちの住む「日本」という国は、「ものつくりニッポン」といわれるように高度の製品輸出国として経済成長を遂げてきました。 戦後の焼け野原から急速に発展を遂げられたのは、世界中に評価される「製品」を作り上げてきたからです。

「ソニー」「パナソニック」「トヨタ」etc.数え上げたら切がないほどですね。

私の友人のアメリカ人は、「ソニー」はアメリカの企業だといって自慢する(これには私は猛然と反論しましたが・・)ほどアメリカではポピュラーな企業です。

戦後しばらくは「安かろう悪かろう」の代名詞のようであった日本製品も、国民・企業の懸命の努力によりその品質を向上させ、 やがては「メイド・イン・ジャパン」といえば「高品質」のイメージをもたれるようになったのです。

その「高品質=メイド・イン・ジャパン」の代名詞であったのが「カメラ」なのです。

~「もの作り」から「感動共有」に~

1951年、アメリカの有名なカメラマンが撮った朝鮮戦争の写真が賞(ピュリッツアー賞)をとり評判になりました。 これを機に日本製のカメラが指示を得て、売れ始めたのです。やがて日本製のカメラを持つのがカメラマンやカメラを趣味とする人々のステータスになり、 日本に旅行にきたら「アキバでカメラを買って帰る」というのが外国人ツアーに常識になりました。 「ニコン」「キヤノン」「コニカ」「ミノルタ」(現在は「コニカミノルタ」に統合)「ペンタックス」「オリンパス」etc.皆さんはいくつ知っていますか?

こうした背景からもっとも分かりやすい「カメラ」の名前を冠した店が出てきたのだと思います。

しかし、現在この「もの作りニッポン」が危機に瀕しています。 安い労働力を求めて企業が工場をどんどん東南アジア(中国、最近ではバングラディシュ、ヴェトナム等)に移しています。これを「産業の空洞化」といいます。

昔の日本がそうであったように、アジアの国々の製品力もやがて日本に追いつくようになるでしょう。そのとき私たちの祖国「ニッポン」はどのようにして生き残っていくのか。 今から考えていかねばなりません。その困難な時代を担うのが皆さんなのです。

今行っている日々の学習は皆さんが将来自分で考え、自己実現していくために必要な最低限の「教養」になるものです。 単調でつまらないかもしれませんが、「基礎」「基本」は常に単調なものなのです。

イチローの9年連続200本安打達成は見事というほかありませんが、その見えないところで繰り返される「基本の繰り返し」を忘れてはなりません。 イチローはグランドキーパーより早く球場に来て、何時間もかけて柔軟体操で体をほぐし、それから基本であるトスバッティングをするそうです。まさしく「天才とは努力の異名なり」ですね。

~「メイド イン ジャパン」から 「メイド バイ ジャパニーズ(ジャパン)」に~

日本の製品は自動車、精密機械等現在でも高い品質により世界中で人気があります。

「ビッグ3」と言われたアメリカの巨大自動車メーカーが破産するのを横目に、日本の自動車メーカーは、環境にやさしい「HV(ハイブリッド)」 あるは「電気自動車」で一歩先んじていたため「金融不況」のダメージはアメリカの企業ほどではありません。

しかし、この分野でもアメリカのベンチャー企業や中国やインドの自動車会社がすぐ後ろまで追いかけてきていますから安心はできません。「品質の差」は必ず時間が経つにつれ縮まってきます。

では、私たち「ニッポン」はこれからどうやって世界で生き残っていけばいいのでしょうか?

皆さんは「感動常在」という言葉を知っていますか?

これはキヤノンが中国の消費者に発信しているスローガンです。日本語に約すと「涙を流して喜んでもらえるような感動を常に提供したい」という意味だそうです。(日経09.10.30より) 「キヤノン」といえばデジタルカメラやプリンターを思い出すでしょう。かつて「メイド イン ジャパン」の代名詞であったアナログカメラで有名だったキヤノンですが、いまやデジタルカメラのトップメーカーです。 しかし、そのトップメーカーでも、かつて日本製のカメラを手にした人々がしたような「感動」を、性能の差をつけにくいデジタルカメラで与えることは難しいのです。

では、どうすれば消費者に「感動」を与えることができるのでしょうか。

キヤノンは「感動を与えるには製品の品質や価格だけでは不十分」だと考え、他との差別化のため、アフターサービスに活路を求めました。 日本ならではの”おもてなしの心”を鍵と位置づけ、カメラの修理拠点を12年までに今の約4倍。窓口は約3倍に増設することにより、 きめ細かいサービスで「感動」を提供することにしたのです。(日経2009.10.23より)

しかし、サービスで「感動」を与えるのはそんなに簡単なことではありません。 ハンバーガーショップのカウンターで「サンキュー」と言われて「感動」する人はきっといないと思います。 相手が予想もつかない対応がなければ「感動」はしないのです。

日本の得意な「ものつくり」はこれからも大事にしていかなければなりませんが、それだけでは日本という国は世界で勝ち残っていくことはできないでしょう。 「感動」は「ものつくり」とは違います。「感動」を与えられるのも、受けるのも「人間」であるなら、その「感性豊かな人間」(人財)を育てていかなければなりません。

そして、感動を与えられる(感動を受け止められる)「ハート」を持った人間に君たちが成長していかなければなりません。

ファインズは、その「人財」つくりのお手伝いをしたいと考えています。

世界中で「メイド バイ ジャパニーズ」が賞賛される日を夢見ながら・・・・

(2009.10.23~2009.11.17)