昨今の子供事情

最近の子供たちを見ていて感じることがあります。
今年のサマーキャンプで、授業の様子を見て回ったときのことです。
小学校4,5年生がグループワークをしていました。生徒は数人でグループを組み、ひとつの課題でディベートをしているところでした。私は授業の邪魔にならないように後ろのドアのところでしばらく見ていました。しばらくして「あれっ」と思いました。

人間とは面白いもので、数人が集まると自然にリーダーシップを取るものが出てくるものです。これは小学生ではとても顕著に現れ、その日初めて会った子供同士でも、何か課題を与えてみれば、その中で指導的役割を発揮する生徒が必ず現れます。いや、これまでなら現れていました。入社試験や中高一貫校の入学選抜方法としてグループワークを取り入れている企業や学校が多いのは、この選抜方法がリーダーシップをはかるのに適しているからでしょう。

ところが、このとき主導的な役割を取っている生徒がいないグループがあるようなのです。それもひとつやふたつではありません。ほとんどのグループで作業が進まず、生徒はただ突っ立っているだけなのです。教師も最初は生徒の「自立」を促していましたが、痺れを切らし、とうとうアドバイスを出し始めました。
その様子を見ていてわかったこと。それは彼らは理解していないわけではなく、また、意見を持っていないわけでもないということです。なぜなら、教師の一押しで動けたのですから・・・

今このような生徒が非常に増えているのではないかと危惧しています。「マニュアル人間」が増えたということは、企業の人事担当者からよく聞きます。しかし、その「マニュアル人間」ともどうも違うようです。「マニュアル人間」は、マニュアルの範囲を出ないにしても、少なくとも「動き」はあるのです。ところが、このときの生徒たちはそもそも「行動」そのものがないのです。われわれファインズの理念である「四自の教育」を実践することが、今こそ要求されるときはないとつくづく感じた次第です。

行動に移せない子供たち

先日ある新聞を読んでいたら、これと全く似たような子供の記事が出ていました。
概略以下のようなことでした。

ある都会の中学2年生の男子。おとなしい生徒で、教師にとっては特段問題児ではない。
宿題も時々忘れるくらい。授業中騒ぐこともない。ホームルームも特に意見を言うこともなく、クラブ活動もしていない。そんな子があるとき「万引き」をして補導された。
家庭に連絡すると、その母親の言葉がふるっている。「万引きって犯罪なんですか?」。
何度電話しても迎えに来ず、やっと来たと思ったら夜中の2時過ぎ。どうしてこんなに遅いのかと問う警察官に、「仲の良いお友達とカラオケに行っていてこれなかった」と悪気も見せずに言う母親。いったいどうなっているのかと暗澹たる思いになったそうである。
その家庭は、10歳以上年の離れた二人の姉と両親の5人家族。年が離れていることもあり、なにくれと世話を焼く姉たち。まるで母親が3人いるかのようである。食事の世話を初めとする身の回りの世話は勿論、宿題の面倒も姉達が行っていたそうである。「過干渉」とはこれなりの典型である。やがて何でも周りの人がやってくれると勘違いする「無行動人間」が完成したのである。ところが、その姉達も年頃になり、恋人ができるとやがて弟の面倒はお留守になりがちに。そして、行き着く先は・・・

三上と三中

こういう子供たちがただ今増殖中。一方で、ほんの小さなきっかけで「思考の面白さ」に目覚める生徒もいるのである。ある生徒の悩み。

「先生!私の家狭いし、兄弟もいるから自分の勉強部屋がありません。だから、ゆっくり考えることもできません。」

そこでその教師は応えた。

『昔の人はね、「三上(さんじょう)」といって、「馬上」「枕上(ちんじょう)」「厠上(しじょう)」でいい考えが浮かぶものだと言っているんだ。つまり、馬の上、ベッドの中、トイレの中さ。馬上は現代では「通学途中」ということかな。また、「三中」というのもいい考えが浮かぶんだよね。』『先生、「三中」って場所ですか?』

『ワッハッハ、君らの中学校も三中だったね。これはね「夢中」「散歩中」「入浴中」ということさ。つまり、人間はその気になればどんなところでも学ぶことができるということだよ。
机の上でやることだけが、勉強ではないということかな。分かるかい?』

『うん。』

『先生の子供の頃はね、トイレの中に単語帳を貼ったり、ベッドの上の天井に歴史のまとめを模造紙に書いて貼ってみていたよ。毎日見るからね。自然に覚えてしまうのさ。でもね、ほら、昔は「和式」だろっ。ついつい長くなると足がしびれてね、立てなくなってしまうのさ。でも、今は「洋式」。しびれなくていいよね!』

『先生!だから「ウンチクを傾ける」っていうの?』

『うっ、う~ん???』

(2010.9.8~2010.9.15)