今回は資生堂元会長である福原義春氏について書いてみたいと思います。

氏は、芸術にも造詣が深く、特に写真は玄人はだしであり、東京都写真美術館館長等多くの公職にも就いておられます。
氏は、創業者一族に生まれながら、平社員からサラリーマン生活を始め、社長就任まで何と34年をかけた苦労人であることで有名ですが、そのことが彼の発言に重みを感じさせる大きな理由ではないか、と私は感じています。
今回は、彼のインタビュー記事の中から私がなるほどと思った部分を抜粋してみました。

氏が力を入れている活動や考えの特徴をなすものは、すぐに役立つ勉強ではなく、長期的に人格や知性を育てるものだという点にあります。「知識」や「ノウハウ」よりも「知性」「教養」を重視し、その「知性」や「教養」はその人の人生を支え、企業人としての骨格を形成するものと考えているようです。この点は、ファインズの理念である「四自の教育」と通じる点があるように思います。

『むしろマネジメントの原理は、社会での活動から学んだといってよいかもしれませんね。ボランティアは無給の活動であり、個々人の自発的動機から生まれるものです。仕事するときでも「社長のために働け」というのではインセンティブにならないでしょう(笑)。鞭でたたいて、飴をぶら下げたほうが会社は発展するかもしれませんが、私は目先の1年の利益よりも長いことお客様に信頼されて10年間利益をあげ続けるほうを大切に考えてきました。
累積利益を大きくすればよい、という考え方です。
社員のモチベーションをどうやって作り出すのか考えることがリーダーの責任です。確かに、命令によって人は動くけれども、命令でなく動く人々の力よりもそれは小さい。
これからはNPOで働く人々のモチベーションを営利組織である企業の人の動機付けにいかに応用するか。未来のリーダーに求められるのは、そんなリーダーシップではないでしょうか。』

この氏の考え方は、海外でのある体験が元になっています。それは、ニューヨークのメトロポリタン美術館を訪ねたときのことです。
ある展覧会のレセプションに招待され、通用口から招き入れられ入ってみると、そこには多くの人がいて、手厚いもてなしを受けました。あとからわかったことだが、その日は本来休館日でした。美術館で接待してくれた人々は、警備員を含めて何と全員がボランティアだったのです。

氏は言います。

『その人達の生き生きした姿を見て、私は現代の会社組織はどこか狂っているのではないかと思いました。無給で働くボランティアの人のほうが、給料をもらって働く人より高い志をもって活動している。このような、ボランティアの人々の力を引き出すリーダーシップを会社の営利活動のしくみとして調和させられないものか。
それができたときに、21世紀型の組織、21世紀型のリーダーシップが生まれるのではないかと思っています。』

『これからの活動は私のミッションだと思っています。このミッションが達成されることが私のインセンティブなのです。』 (「Works」01.4-5月号より)

考えてみれば、P・F・ドラッカーの理念を積極的に取り入れたのは、実はアメリカでは教会、ボーイスカウト等の非営利組織でした。これは、「高い精神性・組織に浸透した理念がなくては、科学的マネジメントを使いこなせはしない」ことの証左だと思います。そんなところに実は「マネジメントの秘訣」が潜んでいるのかもしれません。

(2010.11.25)