皆さんはデーブ・スコットという人をご存知でしょうか。(誰ですか。デーブ・スペクターを想像したのは?) トライアスロンの世界では有名な選手で、ハワイの鉄人レースでは6回も優勝したスター選手です。

彼は毎日の練習で、平均して自転車で120キロ、水泳で2万メートル、マラソンで27キロを何と一日も欠かさずこなしているといいます。 (ちょっと想像するだけでも疲れてしまいそうです)これだけ毎日練習するのですから少々 食べても太るはずはないと思われます。にもかかわらず、彼は脂肪分が少なく、炭水化物が多い食事を取ればさらに自身の能力が高まると確信しているのです。

そこで、毎日の練習で少なくとも5千カロリーを消費しているにもかかわらず、何とコッテージ・チーズを洗って、脂肪分を少しでも取り除いた後に食べるようにしているというのです。
鉄人レースに勝つにはコッテージ・チーズを洗わなければならないことを示す科学的根拠があるわけでは勿論ありません。

しかし、この逸話の核心はそこではないのです。
チーズを洗うのは些細なことですが、この取るに足りない方法により自分の力がさらに少し強まると彼自身が確信していることにこそ核心はあるのです。
この些細な方法を他の多数の方法につけ加えることによって、強烈なほど規律のある、しかも一貫した計画を作り上げているのです。

彼が40度近い暑さの中を、ハワイの海岸に沿って走っているところを想像してみてください。しかも彼はその前に4キロを泳ぎ、海岸の強い逆風を受けながら120キロを自転車で既に走り終えているのです。
彼は走りながら思うことでしょう。「俺はチーズを洗ってまで自制している。
それを思えばこの位はたいした苦しみではない」と・・・

何とつまらないこだわりだ、と笑うのは簡単です。なぜこんな突飛な比喩を取り上げるのかと思う方もいるでしょう。しかし、 膨大な事実を積み上げ、それをルール化すれば、過去に飛躍した人や団体はどれも「デーブ・スコット」に似ているとこの作者はいうのです。

偉大になれたのはなぜか。
その答はかなりの部分、慎重に選び抜いた分野で「日本一」(ある場合は地域一番)になるために必要なことは全て行い、 そして、さらなる改善を常に目指す姿勢、この規律(姿勢)にこそあるのではないでしょうか。

偉大になるための秘訣。じつはこれほど単純なのです。
そして、これほどむずかしいことはありません。

だれでも日本一、世界一になれればなんと素晴らしいことかと考えています。

しかし、ほとんどの人は自尊心に目を曇らされることなく日本一になれる部分を見つけ出す規律と、可能性を現実に変えるために必要な点を全て行う意思に欠けている。

そうです。コッテージ・チーズを洗う規律に欠けているのです。

わたしたちは、「些事にこだわる自己満足」と「コッテージ・チーズを洗うという規律」とを意識的に区別しながら、 「目に見えない努力」をしていきましょう。
その「果実」を来年2月きっと君たちは手にすることができるに違いありません。

(2009.12.15)