中学受験から3年。高校受験にステージを移した彼の真価が問われる2月が、再び訪れます。

 目標である早慶附属校入試の皮切りは慶応志木高校。充分に力を発揮できずに慶応志木高校の入試に失敗した彼は、けれども、顔色ひとつ変えずに、集中を切らすことなく、残る早稲田高等学院・慶応義塾高校の試験に立ち向かいました。

 慶応志木高校・中央大学附属高校・早稲田高等学院・慶応義塾高校。都立受験を予定せず私立に絞った彼の高校受験は瞬く間に終了します。けれども、彼の手に残ったのは、中学受験と同様、残念ながら滑り止めとなる中央大学附属高校の合格だけだったのです。


 やがて高校1年の秋を迎え、中学受験を共に闘った塾の懐かしいメンバーを集めた同窓会が開かれました。高校1年生とはいえ、集まったのはそうそうたる高校の生徒たち。開成高校・桜蔭高校・巣鴨高校・桐朋高校。進学校に在籍する生徒たちの話題は、早くも大学受験です。その席上に、彼の姿もありました。

 驚いたのは会の終了後です。高校受験からわずか8か月。中央大学へのパスポートを手にして附属高校に進学したはずの彼が、突然のように大学受験への挑戦を宣言しました。さらに驚いたのは、かつての戦友たちが、それをたしなめたり笑い飛ばしたりするどころか、一緒に頑張ろうと固い握手を交わしたことです。

「ぼくは、あの素晴らしい仲間たちと、いつまでもどこまでも互いを磨き合っていきたい。ただそれだけなんです。先生、応援してくれますか。」

 その夜、かかってきた電話で、彼はそう言いました。ぼくが気になっていたのは彼の決意の深さ、それだけです。一時の高揚感に浮かされて道を誤るなら、あるいは立塞がることもぼくの役目ではないか、と考えていた矢先のことでした。「ぼくは君の応援団だ。選手が立ち上がって走るなら、声を枯らして応援するだけさ。」そんなぼくの言葉に声のトーンを上げた、彼の歓喜が伝わってくるようでした。

―つづく