唐突ですが、人生において大切なことは、「理想」を胸に抱き、その「理想」を忘れずに保ち続け、その実現のために自らに努力と工夫を課すことだと思うのです。
ただし、この場合の「理想」というのは、何も大それたことでなくていいのです。むしろ基本的であればあるほどいい。たとえば社会的な立場や肩書き、置かれた環境などとは無関係に「人間としてどう在りたいか」というようなことです。もっとわかりやすく言えば「笑顔の自分」がいいのか「ふてくされている自分」がいいのか「泣き言を繰り返す自分」がいいのかというような、誰にでもわかることがベストです。「そんなこと今さら・・・」という声が聞こえなくもないけれど、改めて周囲を見渡してみれば、実際のところそんな幼稚な命題すら忘れてしまう人間があまりにも多くて愕然とするではありませんか。
「困難にぶつかったとき、うろたえたり、挫けたり、言い訳に他人の責任を並べ立てる自分」でいたいのか、それとも「結果はどうあれ胸を張って困難に挑む自分」で在りたいのか。「生きていく上でどうしようもなく傷つけてしまう人の心の痛みを知らん顔で踏みにじる自分」でいたいのか、もしくは「そんな人たちの心の痛みを我がことのように背負っていく自分」で在りたいのか。「仲間なんて利用するだけで信じない自分」でいたいのか、あるいは「たとえ裏切られる瞬間があったとしても仲間を信じることから始める自分」で在りたいのか……。
具体的であればあるほどいいのです。
人生に行き詰ったときは是非試してみて下さい。簡単な二者択一の問題提起をして、自分は本当はどうしたいのか、どう在りたいのかと静かに自分自身と対話するのです。
「泣く」のか「笑う」のか、「行く」のか「行かない」のか、「大切」なのか「大切ではない」のか、「取る」か「捨てる」か、「挑戦する」のか「逃げる」のか、「考える」のか「考えない」のか、「聞く」か「聞かない」か、「伝える」か「伝えない」か……。
バラバラになってしまった自分というピースをもう一度ひとつひとつ組み立てなおしていく作業は根気の要ることです。「どんな人間で在りたいのか」という、自分なりのそういったひとつひとつの理想をしっかりイメージすること。そしてイメージしたらそれを忘れずに保ち続けること。それは決して容易なことではないかもしれないけれど、人生の切り札となるような大切なことなのです。
文責:石井