月の異名

 1

睦月(むつき)

 7

文月(ふづき)

 2

如月(きさらぎ)  8 葉月(はづき)

 3

弥生(やよい)  9 長月(ながつき)

 4

卯月(うづき) 10 神無月(かんなづき)

 5

皐月(さつき) 11 霜月(しもつき)

 6

水無月(みなづき) 12 師走(しわす)

 

折角なので月の異名の覚え方を書き留めておくことにします。

「無興 三味譜は 長しし」

読みは「むきょう さみふは ながしし」で「三味線の楽譜はだらだらと長ったらしくて面白くない」というような意味になります。これを文語表記すると「むきやう さみふは なかしし」となって、この文語表記の12文字が、1月~12月の異名の頭文字になっています。

 

【暦の話①】で紹介しましたが、1~3月が春、4~6月が夏、7~9月が秋、10~12月が冬となり、暦の上では10月は「初冬」にあたります。

10月の異名が「神無月」であることの意味をご存じの方も多いと思いますが、「伊勢神宮の天照大神(あまてらすおおみかみ)を除く日本中の神様、八百万(やおよろず)の神が10月には島根県の『出雲』に大集結し年次総会を開くため、各地方では神様不在の一ヶ月になる」という語源は、実は平安時代以降にひろまった民間の俗説なのだそうです。さらには、この民間語源が基になって、出雲大社をいただく出雲地方では「であれば『出雲』には全国の神々が集結しているので『神無』ではなく『神在』ではないか」ということで、後に10月の異名が、出雲地方に限って「神在月」へ変化していったというわけです。それにしても、1200年続いているのですから、これはもう立派なひとつの文化と言えるでしょう。

 

個人的に、1年中で2番目に好きな月がこの10月です(1番は5月ですが、その理由は今回省略します)。

夏の火照りも冷めて、ひんやりとした空気。空が高い、というよりは雲が薄くて高いことで、「空」と呼ばれる空間がガランと広く感じられる季節。夏の間、遠くかすんでいた秩父連山が、少しずつくっきりとその輪郭を取り戻していきます。少しずつ早くなっていく日没を前に、午後の遅い時間に陽射しが橙色に熟す瞬間があって、見慣れたいつもの風景がとても優しく見えます。

神様不在(?)のひと月。皆様、どうか健康でお過ごしください。

 

P.S

ひとつ、誰でもできる面白い実験をご紹介します。

■陽射しの中で瞳を閉じたまま、1分程度、太陽を見つめてください(くれぐれも目を開けて太陽を直視しないでください)。まぶたの裏に、まるで果てのない真っ赤な世界が広がります。じっと待つと1分が意外に長く感じられるかもしれません。普段ゆっくりできない考え事をしてみてもいいかもしれません。「赤い空間」が次第に「オレンジの空間」へと変化していきます。

さて、およそ1分が経過したら、まずは視線を太陽からずらして、ゆっくりと目を開けてみてください。

□結果は実験してみてのお楽しみ、と言いたいところですが、ネタばらししてしまいます。

空の青さが一層深みを増し、世界全体が青く染まっていきます。吹き渡る風さえもが青く染まっているかのようです。

この青い世界を「美しい」と感じるか、「青ざめて何かにおびえる世界そのものだ」と感じるか、あるいは……。

 

では、今回はこの辺で。

 

文責:石井