いくつかの小さなミス、それは本当にとるに足らない、通り過ぎてしまえば存在したことすら誰も思い出すことの出来ないような些細な失敗が複雑に絡み合って、ある瞬間に避けようのない大きな壁となって人生に立ち塞がることがあります。

 それはまるで小さなうねりを重ね合わせた波の動きが突然のように高波となって磯を飲み込む現象と酷似しています。

 無事であれば容易にイメージできた最善の結果に至る道が、困難を通り越して不可能の海溝の底深く沈みこみ、最早どう足掻いても取り戻せないとすれば、ぼくらは残された僅かな可能性に一体どのような優先順位をつけ、どんな解決を図ればよいのでしょうか。

 危機管理などといっても、ぼくらの日常におけるそれはあまりにも現実感から遠い地平にあるのです。

 誰もが納得のいく解決が得られない苦境に際しては、自己の利益を優先させる方法は以ての外で、次のステージへの展望を無視した強引な突破もやがては致命傷に至る無数の傷を生み出すだけの愚かな行為であり、なけなしの知恵を絞って考えるなら、ぼくらのとるべき態度は人を大切にする誠実さ以外にないのではなでしょうか。

 仮にそれで当面の目標が遠ざかるのだとしても、人を生かす道の先には必ず次のステージに至る分岐点が存在するに違いないと確かに思うのです。。

文責:石井