第25回~第26回「発想の転換」
(第25回) あるアメリカの工作機械メーカーが、家庭用ドリルとして4分の1インチのドリルを作りました。 ところが、たいしたマーケッティング調査もせずに作られたこのドリルは家庭用のものとしてはめずらしく爆発的なヒット商品となったのです。 そこで、なぜこのドリルが売れたのかが検討され、役員会でも話題になりました。このとき、この会社のCEOはマーケッティング担当者の報告を聞いて、こう答えたといいます。 「昨年度、4分の1インチのドリルが10万個売れた。これは、人が4分の1インチのドリルを欲したからではなくて、4分の1インチの穴を欲したからである。」 このCEOの言葉がヒントになったのでしょう、マーケット担当者は各家庭でどのような大きさの穴をあける需要があるかを調査しました。 その結果、出来上がった商品は、「本体は1つ、多様な替刃をもつドリル」でした。インチごとのドリルを売るのではなく、ドリルの刃を替えることにより、各家庭での幅広い需要に応えることができるドリルを作ったのです。 この商品は市場を席巻しました。(100万台以上売れたといいます。) 今でこそ、日用大工の商品としては当たり前のようにDIYスーパーの商品棚に並んでいるドリルですが、その背後には一人のCEOの発想の転換があったのです。 この話は、顧客は製品を買うのではない。製品がもたらすベネフィット(便益、利便性)に対する期待を買うのだというレビットの主張を端的に表していると思います。 ......