第46回「ミッションとインセンティブ」
今回は資生堂元会長である福原義春氏について書いてみたいと思います。 氏は、芸術にも造詣が深く、特に写真は玄人はだしであり、東京都写真美術館館長等多くの公職にも就いておられます。 氏は、創業者一族に生まれながら、平社員からサラリーマン生活を始め、社長就任まで何と34年をかけた苦労人であることで有名ですが、そのことが彼の発言に重みを感じさせる大きな理由ではないか、と私は感じています。 今回は、彼のインタビュー記事の中から私がなるほどと思った部分を抜粋してみました。 氏が力を入れている活動や考えの特徴をなすものは、すぐに役立つ勉強ではなく、長期的に人格や知性を育てるものだという点にあります。「知識」や「ノウハウ」よりも「知性」「教養」を重視し、その「知性」や「教養」はその人の人生を支え、企業人としての骨格を形成するものと考えているようです。この点は、ファインズの理念である「四自の教育」と通じる点があるように思います。 『むしろマネジメントの原理は、社会での活動から学んだといってよいかもしれませんね。ボランティアは無給の活動であり、個々人の自発的動機から生まれるものです。仕事するときでも「社長のために働け」というのではインセンティブにならないでしょう(笑)。鞭でたたいて、飴をぶら下げたほうが会社は発展するかもしれませんが、私は目先の1年の利益よりも長いことお客様に信頼されて10年間利益をあげ続けるほうを大切に考えてきました。 累積利益を大きくすればよい、という考え方です。 社員のモチベーションをどうやって作り出すのか考えることがリーダーの責任です。確かに、命令によって人は動くけれども、命令でなく動く人々の力よりもそれは小さい。 これからはNPOで働く人々のモチベーションを営利組織である企業の人の動機付けにいかに応用するか。未来のリーダーに求められるのは、そんなリーダーシップではないでしょうか。』 この氏の考え方は、海外でのある体験が元になっています。それは、ニューヨークのメトロポリタン美術館を訪ねたときのことです。 ......